【国が認めた借金救済制度】弁護士・司法書士がネット広告で集客【がやてっく話題】
- 2025/02/22 06:00
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国が認めた借金救済制度
スマホで動画やサイトを開いていて「借金が減りました」や「国が認めた借金救済制度」などの文言を見聞きすることはないだろうか?最近、一部の弁護士・司法書士事務所がネット広告を活用してこうした広告を打ち出している。
この広告はどういう意味なのか?
「国が認めた借金救済制度」広告について解説する。
国が認めた借金救済制度はキャッチコピー
国が認めた借金救済制度とは、自己破産や個人再生など「債務整理」を親しみやすい言葉に置き換えた、いわゆる広告用のキャッチコピーである。こうした手続きは、実際に救済処置として認められているため、国が認めた借金救済制度というのは言葉としては間違っていない。また、広告出稿先が弁護士事務所や司法書士事務所などの法律事務所であれば、詐欺広告というわけでもない。こうした債務整理の手続きは、法律事務所に相談すれば対応してくれるからだ。
債務整理
借金の減額、免除または支払いの猶予を目的として手続きを債務整理という。債権者は利息や分割払いの期間について直接交渉し、合意に基づいて一定額ずつ返済する「任意整理」が最も多いケースである。これに対して、裁判所で行う手続きとして、生活に必要な最低限の家財や当面の生活資金などを除いた財産を債権者に分配し、債務を免責する「自己破産」や、返済額を大幅に削減した上で、原則3年で分割して返済する「個人再生」などがある。それぞれにメリット・デメリットがあり、収入や財産状況に合わせて選ぶ必要がある。
国が認めた借金救済制度広告
月々の返済が厳しい状況にある人からすると、借金額を減らすことが出来るというのは大きなメリットだと思う。そんな言葉につられて、広告をクリックする人が年々増えているという。もちろんうまく借金額を減らすことが出来た人もいるだろうが、中にはトラブルになるケースもあるようだ。
依頼者との面談は義務
日弁連(日本弁護士連合会)では、債務整理に関する規定として、弁護士は依頼者と面談し、処理方針などを説明することが義務付けられている。司法書士には各都道府県の司法書士会が同様のルールを設けている場合が多い。
高額な着手金を受領しながらも・・・
にもかかわらず、最近は高額な着手金を受領しながら面談をしない弁護士や司法書士が増えているという。破産手続きをしなければならない状況にもかかわらず、正気の任意整理へ誘導するなど、財産状況に見合わない無謀な計画を示し、依頼前よりも負債が膨らむという事例が増えているというのだ。「依頼をしてから一度も弁護士に会っていない」「メリットやデメリットなどを説明されることなく破産を進められた」「着手金を払ったのに、一方的に辞任された」などの相談が弁護士会・司法書士会に数多く寄せられているという。
何故かはわからないが月々の返済額が手続き前よりも増えてしまった・・・
これはWEB広告で債務整理をした依頼した方の事例である。
Aさんは、国が認めた借金救済制度という広告を見て、出向先の事務所に債務整理を依頼した。手続きは「WEB上の申込画面」に必要事項を記入しただけで、入力が完了すると「受付が完了しました」というメールが届いただけだった。そこから月々6万円の支払いが始まった。なぜかは分からないが、債務整理の手続きをする前よりも月々の返済額が上がってしまったという。毎月やってくる月々の支払い6万円・・・Aさんは半年で支払いが出来なくなってしまった。
借金を早く少しでも減らしたいという気持ちが強かったため、弁護士の言うことを信じてしまいました
他にもこんな事例が。
40代の女性は、生活費のために消費者金融から65万円を借り、返済に追われる毎日を送っていた。ある日、動画配信サイトを見ていた彼女は、「借金が減った!」という体験談をうたう動画広告を目にした。心引かれた彼女は、広告をタップした。すると、無料診断という画面に案内された。そこでは、借金額や連絡先を入力するだけで借金が減るかどうか診断できるというものだった。
その後、都内の弁護士事務所から連絡があり、事務員とLINEやメールでやりとりを重ねた結果、毎月の積立金を振り込むよう指示された。月々の返済額よりも1000円ほど安かったため、彼女はこの提案を受け入れ、8か月でおよそ13万円を支払ったという。
ところが、冬になり消費者金融との示談がまとまったと聞かされた返済額は、遅延利息を含めて76万円に達していた。借金が減っていないことに疑問を感じた彼女は、自治体の消費生活センターに相談。センターからは、本来は破産手続きを進めるべき状況だったと知らされた。
その後、支援団体の司法書士を通じて弁護士事務所との契約を解除しましたが、積立金として支払ったお金は着手金として扱われ、返還されなかった。
和光事務所の経験でも
埼玉県越谷市に司法書士事務所を構える和光事務所の司法書士:鈴木友治さんは「1000人以上の任意整理を手がけましたが、私の経験上、月6万円以上の任意整理で支払いを終えることが出来た人は1人しかいません」という。債務者にとって6万円という金額は、それくらい大きな負担なのだ。続けて鈴木さんは「本来、債務整理は、依頼者の収入や家族構成・必要な生活費・保険料や税金・車検代や子供の入学金など将来かかる費用への積み立てなどを確認した上で、利用者と一緒に支払い可能な金額を決める。支払い可能額で完済できる債務額なら任意整理、難しければ自己破産や個人再生を選択する。手続きの判断は依頼者の将来を左右する重要な判断なので、事務員がメールやLINEなどでやり取りをして終わりというのはありえない」と語る。WEB広告によるずさんなやり取り・対応によって、逆に債務が増えたり、着手金を払ったのに満足のいく対応がなされなかったりという事例は少なからずあるようだ。上記2つの事例は、どちらも共通して「弁護士との面談・打ち合わせ」などがない。どちらも電話やメール、LINEなどの連絡ツールを使用し、主に事務員が話を進めてしまっている。義務である面談や説明などが果たされていないのだ。
債務整理は直接依頼を
「借金の相談は周囲にしづらいという方も多いというが、WEB広告での無料診断で済ませてはいけない。直接法律事務所を訪れて、対面で相談することが大切」だと鈴木さんは言う。自分の借金がいくらあり、どれくらいの着手金を支払い、手続きにあたって必要な書類等はどのようなものなのかなどは、直接相談した中で確認するべきだろう。また、進捗の報告はこまめに尋ねることも大切だ。気づいたら負債が増えていたという状況を防ぐためには、こまめに確認する必要もあるという。任せておしまいではなく、依頼者と弁護士や司法書士が二人三脚で生活再建を進めていくことが大切だという意識を持つべきだろう
有志の救済団体や自治体の消費生活センターも
こうした問題を防ぐためにも、相談先は沢山知っていた方がいい。鈴木さんは、いわゆる「過払い」や「ネット相談」がブームになる前から存在する、有志の弁護士や司法書士などによる消費者支援団体(全国クレサラ・生活再建問題対策協議会や全国青年司法書士協議会など)への相談を勧めるという。自治体の消費生活センターでも相談にのってくれる。債務整理は、専門的な知識を必要とする場面がほとんどなため、素人が下手な知識で対応することはかえってリスクになる可能性がある。相談先を沢山知っておくことで、自分1人で判断しなければいけないという状況を回避することも重要だ。
着手金(と称するお金)の返済請求に成功したケースも
最近では、着手金として支払ったお金の返済請求に成功した事例も出てきたという。鈴木さんの知り合いの司法書士は、こうした悪徳事務所の広告・ずさんな対応の被害に遭った方が支払った着手金と称するお金を取り戻したことを報告していたそうだ。全国青年司法書士協議会の会長が、弁護士・司法書士の不適切な債務整理による被害に対して声明を発表している。弁護士会・司法書士会ともに本格的な対策に乗り出しているようだ。泣き寝入りすることなく、勇気を出して相談してほしいと思う。
WEBですぐできますは疑う
最後に鈴木さんは債務整理に限らず「WEBですぐできます」や「宣伝自体」を疑うようにしてほしいという。埼玉県では、弁護士会・司法書士会に地元の先生を紹介してもらえる制度がある。広告ではなく、コチラを利用したほうが安心度は間違いなく高い。色々な選択肢を持ち、1人で結論を出さないようにしてもらえればと思う。こうした被害が少しでも少なくなることを願う。