2024/4/25越谷 がやてっく 雑談 ローカルメディア ローカルサイト越谷CITYメール
司法司書法人和光事務所

<絶対に甘党宣言!>重力とシロノワール【がやてっくグルメ】


<絶対に甘党宣言!>重力とシロノワール【がやてっくグルメ】

<カタカタカタ>

書類の山を前に優子は疲弊していた。

右側に積まれた書類をさばいて左に流す。

また、さばいて流す。

「これじゃ、私の人生と同じじゃない。」

と、心の中で呟いた。

「優子さん、大丈夫ですか?」

隣のデスクに座る部下の義道に言われたが、最初は全く気付かなかった。

「優子さん、、、大丈夫ですか?」

「あ、義道くん、心配ありがとう。うん大丈夫よ。」

心の中で呟いた声が聞こえてしまったのかと思った。

が、そうではないようだ。

義道は昨日から風邪気味の私を気遣ってくれているだけのようだ。

<本当にそうなのかな?>

後ろを振り返ると普段のオフィスの光景が広がっていた。

<カタカタカタ>

<バタン>

<ペチャクチャペチャクチャ>

まるでデジャブような光景に優子は少し微笑んだ。

「間違いなく地球はまわっている。」

もしかしたら、アインシュタインが特殊相対性理論や粒子と波動の二重性やらシュレディンガー方程式で世界中の人々をだましているのかもしれない。

しかし、今はそんなことがどうでもよかった。

重力の作用で地球に引き寄せられている書類の山の1枚が、優子に気遣いながら風で飛ばされていった。

終礼後、優子は時計を見た。

「今なら越谷駅に19時には到着するわ。」

電車の時刻表が否応なく優子の頭の中を占領する時間だ。

まるで、学生運動に参加している大学生のように。

優子は毎週水曜に「ヨガ」に通っていた。

特に「ヨガ」にこだわりがあるわけではない。

三十路を境に自分を変えようと小さな決心をした。

結果、ヨガを始めたに過ぎなかった。

誰かにさばかれてく書類の山のような人生を抜け出したいと思っていたのだ。

「急がなくっちゃ。」

千代田線の「あなたと一緒なら」のメロディに押されながら電車に駆け乗った。

<プシュー>

<ガシャン>

<ガタンゴトンガタンゴトン>

優子は席に腰を下ろし先週のヨガ教室のことを思い返した。

教室の帰りに好美と立ち話をしてた。

「キムタクがかっこいい」とか「竹ノ内豊がクール」だとかそんな話をしてたっけな。

「あとなんだっけ。。。」

そう考え始めた瞬間、優子の目の前の光景が変わっていた。

もちろん、いつものオフィスの光景なんかではない。

温もりのある照明、赤い席、コーヒーの匂い。

「そういうことね。」

優子は少しも驚くことはなかった。

むしろ、この日を待ち望んでいたのかもしれない。

そう、思い出した。

昨日、好美と話した後の帰り道で「甘党宣言」をしたこと。

当たり前のように店員が優子の目の前に「シロノワール」を差し出した。

優子は気持ちをさらに落ち着かせた。

「私は間違っていないわ。」

優子は無心で食べ始めた。

一口食べることに優子は「何か」を取り戻しているようだった。

言うまでもなく、その「何か」を取り戻すために甘党宣言をしたのだ。

雪の中から顔を出した子ぎつねのように、「何か」は私を遠目で見ているようだ。

また、一口。

そして、もう一口。

優子は確信せざる得なかった。

そう、確信せざる得なかったのだ。

「状況証拠は揃ったわ。」

優子は重力に逆らえない書類の山を懐かしく感じていた。

夏のセミの抜け殻を見つめるように、昨日の自分を見つめていた。

まだ、会社では残業をしているメンバーがいる。

<カタカタカタ>

<バタン>

<ペチャクチャペチャクチャ>

<カタカタカタ>

<バタン>

<ペチャクチャペチャクチャ>

優子は越谷駅からヨガ教室までの道を歩いていた。

昨日までは暗い蛇のようなトンネルに感じていた道のりが、今は明確に照らされた街路樹へと変わっていた。

「私は書類の山とは違う。」

優子はいつもと同じ服に着替えてヨガ教室へ入っていった。

新しい「君」と共に。

~END~

※絶対に甘党宣言!の物語はフィクションですが、登場しているデザートは越谷市内の店舗で実際に提供されているデザートです。

※今回は「コメダ珈琲新越谷店」さんのデザートでした。