<�絶対に甘党宣言!>平均的な感情起伏【がやてっくグルメ】
- 2022/02/27 06:00
- あー さん
- がやグルメ
<ガタンゴトンガタンゴトン>
<ビュビュー>
<ハタハタハタ>
渋谷の地下鉄では電車がくるたびに風が強く吹き抜けていった。
そんな風を受けながら、翔太は仕事帰りに駅のホームでただただ通り過ぎる電車を眺めていた。
蒲生駅までの終電を気にする時間ではないが、なんとなく気になっていた。
<ガタンゴトンガタンゴトン>
<ビュビュー>
<ハタハタハタ>
一体、今までの人生でいくつの列車に乗ったのだろうか。
学生の頃はアルバイトで貯めたお金を一人旅に費やした。
個人的には四国にある「四国まんなか千年ものがたり」や九州の「或る列車」を気に入っている。
だが、写真を撮りたいとか想い出を増やしたいとか将来の自分への投資というわけではない。
ただただ一人で旅をすることが好きだった。
そう、ただただ一人で旅をすることだ。
<ガタンゴトンガタンゴトン>
<ビュビュー>
<ハタハタハタ>
・
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そんなことを考えていた駅のホームでふと肩をたたかれた。
いや、ふと肩をたたかれた気がしただけかもしれない。
その肩のたたき方は、とても優しく滑らかで、そして強固な意思をもったたたき方だった。
もし、肩たたき選手権が開催されたら予選は簡単に勝ち抜くだろう。
「仕方ないな。」
翔太はつぶやいた。
後ろを振り返ろうとすると、突如翔太の頭の中に「何不自由なく生きてきた30年間」が走馬灯のように駆け巡った。
平均的な人生。
平均的な感情起伏。
平均的な年収。
そう、決して何不自由なことはなかった。
<ガタンゴトンガタンゴトン>
<ビュビュー>
<ハタハタハタ>
どこかの国では砲弾に怯えて暮らしている人々がいる。
翔太はたまらず「甘党宣言」をしていた。
その瞬間、、、いや瞬間ではなく、甘党宣言をする気持ちになってから、目の前の景色は変わっていた。
きっと、昭和時代、学生だった人々は懐かしく思うだろう喫茶店に座っていた。
しかし、翔太にとっては新鮮な店内に感じた。
翔太の中にある「何か」がうずくのを感じた。
「命は有限だ。」
翔太はむさぼるようにパフェを頬張った。
甘いエキスが脳内血管を駆け巡る音が聞こえた。
翔太は改めて生きている自分に気が付いた。
「僕は生きている。」
<ガタンゴトンガタンゴトン>
<ビュビュー>
<ハタハタハタ>
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翔太は蒲生の駅に着くと、いつもの「FASTGYM24 蒲生」で汗を流した。
その汗はいつもより強い重力に引かれて下に落ちていった。
「日本での生活は終わりにしよう。」
翔太は新しい未来の中で生きる自分を思い浮かべた。
そこに正しさや正当性は微塵もなかった。
むしろ、危険や批判が待っているように感じた。
しかし、今の翔太にとってはどうでもよいことだった。
翔太は新しい1歩を踏み出した。
新しい「君」と共に。
~END~
※絶対に甘党宣言!の物語はフィクションですが、登場しているデザートは越谷市内の店舗で実際に提供されているデザートです。
※今回は「パーラー鯉」さんのデザートでした。