2024/4/26越谷 がやてっく 雑談 ローカルメディア ローカルサイト越谷CITYメール
司法司書法人和光事務所

<絶対に甘党宣言!>カナリア・アイランド【がやてっくグルメ】


<絶対に甘党宣言!>カナリア・アイランド【がやてっくグルメ】

<トゥルダンッダンットゥルダンッダンッ>

<♪薄く切ったオレンジをアイスティーに浮かべて>

<♪カナリア・アイランド、風も動かない>

ヘッドフォンのボリュームは常にMAXだ。

おそらく鼓膜は振動のし過ぎで長くはもたないだろう。

そう思いながら50歳に差し掛かろうとしていた。

京香は当時では珍しい女性のスタジオミュージシャンとして今に至る。

しかし、現実は定期的にバイトを掛け持ちしながらの生活が多い。

<トゥルダンッダンットゥルダンッダンッ>

<♪薄く切ったオレンジをアイスティーに浮かべて>

<♪カナリア・アイランド、風も動かない>

「風も動かない。」

そう言葉にした2秒後に恥ずかしくなった。

大滝詠一というメロディーメーカー。

ニューミュージックの先駆者。

いや、彼は一体何を残したかったのだろうか。

京香はベーシストとして何をのこせるのだろうか。

<トゥルダンッダンットゥルダンッダンッ>

<♪薄く切ったオレンジをアイスティーに浮かべて>

<♪カナリア・アイランド、風も動かない>

スタジオ帰りに立ち寄った牛丼屋で少年がこっちをみつめていた。

高校生くらいだろうか。

少年は私が透明であるかのように私の存在自体を一生懸命確認しているようだった。

しかし、確認できた途端にため息に変わり、そそくさと牛丼を平らげて出て行ってしまった。

こんな年頃の人間が楽器を担いで歩いていたら、気になるに違いない。

「牛丼、並盛1つ、あとたまご」

そう告げると、店員は愛想と無礼の間の笑顔を浮かべてエンターキーを強く推した。

もしかしたら、大滝詠一は何かを残そうとしたわけではなく、純粋に音楽を奏でていたのかもしれない。

世間が作り上げた「ミリオンセラー」や「ヒットメーカー」などの言葉で固められた大滝詠一は、自宅に帰ると背中のファスナーを下におろして、別の誰かが出てきているのかもしれない。

そんなボヤっとしたことを考えていた。

牛丼の割に出てくるのが遅い。

いや、待てよ。

ふと我に返った。

目の前の景色が変わっていることに気付いた。

「ここは、、、なるほどね。」

甘党宣言のことを思い出した。

特に誓約書などを記入するわけではないが特定の条件下で宣言する必要がある。

店員はうつろな目をしている京香の目の前に誰よりも優しくデザートを置いて厨房へ引き返していった。

京香は大瀧詠一のことを思い出しながらデザートをむさぼった。

「♪ぼくは自分が誰かも忘れてしまう」

そうか、、、

そうだったのか、、、

京香は悟った。

それと同時に胸の内から「何か」が湧いてきた。

熱いマグマのような「何か」だ。

きっと、誰かのためとか、誰かを助けるためと、そういったことではないのかもしれない。

自分が誰かも忘れてしまうほど、自分に忠実で集中して生きることが必要なんだ。

京香は自分が何かを成し得なければならないと前のめりに焦っていたのだろう。

<トゥルダンッダンットゥルダンッダンッ>

<♪薄く切ったオレンジをアイスティーに浮かべて>

<♪カナリア・アイランド、風も動かない>

「♪ぼくは自分が誰かも忘れてしまう」

京香は後悔はしていない。

自分が残せることなんて考える必要なんかないんだ。

<トゥルダンッダンットゥルダンッダンッ>

<♪薄く切ったオレンジをアイスティーに浮かべて>

<♪カナリア・アイランド、風も動かない>

そう、どんなに考えても風も動かない。

京香はベースを握って「カナリア・アイランド」を奏でた。

もちろん、Aメロ最初のAmの入りに気を配りながら。

新しい「君」と共に。

~END~

※絶対に甘党宣言!の物語はフィクションですが、登場しているデザートは越谷市内の店舗で実際に提供されているデザートです。

※今回は「ペパーミントハウス」さんのデザートでした。