2024/11/22越谷 がやてっく 雑談 ローカルメディア ローカルサイト越谷CITYメール
司法司書法人和光事務所

<�絶対に甘党宣言!>夢は美しい、しかし叶える道は泥の道【がやてっくグルメ】


<絶対に甘党宣言!>夢は美しい、しかし叶える道は泥の道【がやてっくグルメ】

<ガチッ>

<スルスルスル>

<ストーン>

今は夜の12時過ぎ。

最近は特に夜の人出は劇的に減っている。

<ガチッ>

<スルスルスル>

<ストーン>

今まで一体どれだけのものを獲得してきたのだろうか。

もはやどんな景品を獲得しても面白くない。

商材が置かれている場所とクレーンの特性から、商材を獲得できるかが一目で分かる。

<ガチッ>

<スルスルスル>

<ストーン>

「わぁ、すごーい!」

未成年だろうか、俊成がクレーンゲームの景品を獲得する姿を声がわずかに聞こえるだろう距離で騒いでいる。

三浪目の今年は絶対に大学に受からなければならい。

はずだ。

「ちっ、取り損ねちまった。」

俊成がつぶやくと、さっきのグループの1人が「弘法にも筆の誤り」とつぶやき返し、そして消えていった。

「弘法にも筆の誤り」

<ガチッ>

<スルスルスル>

<ストーン>

俊成は高校2年生のころ、当時の彼女であった佐奈とよくウェアハウス越谷に立ち寄った。

俊成と同じくらい取り柄がない彼女だった。

厳密にはそう思っていただけだった。

俊成が何気なくクレーンゲームで景品を取っていると、佐奈は今で見たことのない笑顔ではしゃいでいた。

あんなにも人に喜ばれたことが始めの経験だった。

その後、佐奈とは3カ月ほどで別れを迎えた。

今は一体何をしているのかも分からない。

あの日の残り香が今も残っているのは言うまでもない。

3年生の卒業式の前日、たまたまステーキガスト南萩島店の裏の通りですれ違った。

「佐奈」

脳内でつぶやいたつもりだったが、かなり大きな声を出してしまった。

佐奈は驚いた表情を浮かべつつも、少し安堵した様子で近づいてきた。

1歩、1歩と距離が狭まっていく。

<カツ>

<カツ>

<カツ>

一体何歩目だろう。

ある歩数を踏んだ瞬間から、そこは紛れもなく喫茶店の店内だった。

「久しぶり」

佐奈が当たり前のように声を発した。

今の状況に驚くわけでも受け入れるわけでもなく、ただそこに存在した。

そこにいるのは夏のセミが抜けたあとの殻のように、輪郭をしっかり保っていた。

もちろん、本当の佐奈はどこかに行ってしまったのだろう。

そんな空想の終わりが見えなくなってきたころ、目の前にデザートが置かれた。

僕は思わず涙をこぼしていた。

確かに言えることは、その涙の純度は過去最高だということだ。

そして、右目から一滴だけこぼれ落ちた。

佐奈の左目から同じタイミングで一滴だけこぼれ落ちた。

おそらく、30分くらいだろうか。

ゆっくりと、そして無言で2人は食べ続けた。

時にじっくりと、時にさっくりと。

<ガチッ>

<スルスルスル>

<ストーン>

俊成は「甘党宣言」の恐ろしさを感じた。

僕の中にある「何か」を掘り起こし、そして、強制的に熱を加えていく。

そこには、自分のアイデンティティは一切考慮されなかった。

<ガチッ>

<スルスルスル>

<ストーン>

決まったタイミングでボタンを押し、自動で元の位置に戻る。

<ガチッ>

<スルスルスル>

<ストーン>

「もう分かった、許してほしい。」

我に返るとステーキガスト南萩島店の裏で夕日を浴びていた。

いつもより少しだけ暖かく感じた。

ウェアハウス越谷を後にし、不動産屋へ駆け込んだ。

「夢は美しい、しかし叶える道は泥の道」

僕はスマートには生きれない人間だ。

俊成は事業用の物件にサインをした。

新しい「君」と共に。

~END~

※絶対に甘党宣言!の物語はフィクションですが、登場しているデザートは越谷市内の店舗で実際に提供されているデザートです。

※今回は「タナカ食堂」さんのデザートでした。